土浦 小町の里

平成28年9月中旬

筑波山の東、里山の近くに小町の里があります。

「花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに」

と百人一首にも歌を残す小野小町が、この地で亡くなったのだそうです。
各地に小野小町の言い伝えが残されたところがあり、墓も各地にあるようです。
小町はこの朝日峠を越え、北向き観音に向かう途中、病に倒れ、村長・小野源兵衛宅で介護を受けましたが亡くなったとされ、同家に墓が残されています。
この地に、研修施設「小町の館」が建てられ、素朴な案山子が出迎えてくれました。
季節は暑さも和らぎ、初秋になってきました。トンボたちも飛び交っています。何種類ものトンボを見かけましたが、なかなかシャッターチャンスが得られないものです。このトンボは足下にじっとしていてくれました。
小町の館から、朝日峠への道をたどることにします。小町の腰掛け岩というものがありました。人工的に作ったのではないかと思われるほど、座るのにちょうどいい石が民家の脇に置かれていました。
道はここから沢の音を聞きながら登り始めます。
オナモミがもうこんなに実を付けていました。その葉の上には小さなカエルがたたずんでいます。見落としてしまいそうですが、こんな小さな生きものに出会えるのも散策の楽しみです。
藪にからみついた蔓に、カラスウリが実を付けていました。夜にレースのような白い柔らかな花を咲かせるのですが、実は鮮やかなオレンジ色になり秋の景色を彩ってくれます。まだ若い実は縦の縞で小さなスイカのようです。
山道に入ると、うっそうとした木々に囲まれ、細い道になります。「朝日峠越ハイキングコース」となっているのですが、あまり人が入っているようには思えません。砂礫なのでしょうか、湿ってはいますが、滑ることはありませんでした。
「小町の水のみ沢」というところまで来ました。沢からの水がチョロチョロと流れています。館から800m、峠へ1400mの地点だそうです。
雲行きが怪しくなってきましたので、無理をせずここで引き返すことにしました。
登っている時には気づかなかったのですが、路傍に小さな石仏が置かれていました。
昔の人々はこの山道を日々の生活のために通っていたのでしょう。
道がキラキラしていることに気づきました。何かが光っています。よくよく探してみると雲母片岩の露頭がありました。その雲母が道に散らばっているのです。結構大きな雲母片を見つけることができました。家に帰り、その雲母を洗ってみると、水に沈みます。雲母は鉱物なんだと改めて納得しました。
館に近づくと、頭の上をパラグライダーが飛んでいきます。朝日峠から離陸して館の前の着陸場に降りるようです。のどかな田園の中に音もなく、ふんわりと空中散歩をしているのはうらやましい限りです。