馬の背を渡る 〜南牧村・黒瀧山〜 
 前回(20年9月)に訪れたものの、天候に恵まれず断念した、「馬の背」渡りに挑戦してきました。
 不動寺の宿坊の前を進むと、黒瀧山へのルートに入ります。整備された山道を歩くこと10分ほどで、林道に出ます。標識に従って九十九谷・馬の背方向へ進むと、お目当ての馬の背が見えてきます。
 ここが話に聞いていた「馬の背」でした。数十cmほどの人がやっと通れる狭さです。両側はすとんと落ち込んだ崖になっていて、歩くところには鉄の棒に鎖が付けられた柵が並んでいます。ただし、片側だけです。
 ナイフエッジと言えるようなルートで、「怖い」と思ったら足がすくんで渡れそうもありません。
 幸い、穏やかな天候で風もなく、周りの景色を楽しむようにして渡り切りました。
 馬の背を渡りきると、すぐハシゴになります。ハシゴはしっかり岩に固定されているとはわかっているのですが、足を踏み出すごとに揺れてきます。周りの景色を見る余裕もなく、両手でしっかり身体を確保しながら登り切りました。
 そして、やっと上から通ってきた道を撮影したのがこの写真です。
 「帰りにはもう、ここは通りたくない」という気持ちがこみ上げてきました。
 しかし、先に進んでもさらに道は厳しく、スリルを味わえました。岩に足がかりが刻まれているのですが、三点確保をしっかりしないと転落しそうな恐怖が味わえます。
 登るのを躊躇したハシゴです。この角度で岩に固定されています。細い岩の斜面に架けられているので、手すりが設置されているものの、登っていくときにはまるで空中を進んでいくような感じです。
 後に戻ることもできないので、ともかく進みました。
 どうにか観音岩まで到着。ここからのパノラマはすばらしかったです。ただし、岩の上で平らなところはありません。写真を撮るからこちらを向いて、と言ったのですが、この体勢から動けませんでした。
 さらに進んで九十九谷まで来ました。
ここも左右が切り立った岩のところを渡らなくてはなりません。エッジの少し下がったところに足がかりが削り付けられていました。そこに足を掛けるのですが、両手を着いていないと恐怖を感じます。
 スリルを満喫した後の野の花は心を和ませてくれます。アザミの花がすてきな色で出迎えてくれました。
 九十九谷からの下りは杉林の中を歩き、山里の景色を楽しみながらの散策でした。
 馬の背をもう一度逆から通ることは避けたかったので、ぐるりと下底瀬から上底瀬の集落の方を通るルートをとりました。不動寺への林道を歩いていると、あの「馬の背」が見えてきます。
 ほとんど垂直ながけの上に鉄の棒と鎖が並んでいるのが見えます。
 あそこを渡ったんだぞという達成感が味わえました。

平成22年6月初旬