アンテナのインピーダンス変換

EFHWの場合、半波長で長さが決まっているのですが、その給電点のインピーダンスがとても高くなっているようです。9:1のトランスフォーマーでは対応できません。そこで、64:1のものを作りました。
巻き方を変更するだけですので、このケースに収めることができます。チューナーのようにしっかりした整合を取ることはできませんが、半波長のエレメントを取り付けることで、大まかな整合を得ることができました。


入力側とアンテナエレメント側の巻き数の比の二乗が変換比となるようです。
3:1の巻き数では9:1の変換比になり、8:1の巻き数比で作ると64:1の変換比となります。EFHWでは49:1の変換比のものもよく使われます。この場合、巻き数を入力側を2Tとするとエレメント側を14Tとすることでこの変換比が得られます。
9:1 Transformer
 End Fed Antenna

終端給電アンテナという名まえはいろいろな呼び方をしているようです。ロングワイヤーと呼ばれたりランダムレングスと呼ばれたりしています。その中で半波長のエレメントを使ったものがEFHWと呼ばれるようです。
波長に対してどの位置で給電するかによってそのインピーダンスが異なります。ハーフウェーブの場合、大変高いインピーダンスになるのでチューナーを使ったり64:1のトランスフォーマーで整合を取っています。その他の場合には9:1などのトランスフォーマーで対応できることが多いようです。
給電点が波長に対して好都合なインピーダンスになるような長さを選ぶと1本のエレメントで複数のバンドで運用できると考えられます。

4k7Ωのダミーでも各バンドSWR1:1に整合できました

ロングワイヤーアンテナの場合、給電点のインピーダンスがとても高くなるので、トランスフォーマーを用いて整合を取る場合があります。9:1とか49:1、64:1など巻き方によってさまざまなトランスフォーマーを作ることができます。
ここでは、9:1のトランスフォーマーを作りました。巻き方は一般的な3本の線を一緒に巻き、それぞれの末端を回路図に従って配線したものです。
実際に使う場合には、ケースに入れて扱いやすくする必要があります。そこで、ペットボトルの注ぎ口を切り取り、2つを合わせたものをケースにしました。一方をアンテナとの接続点とし、他方をBNCコネクタでのリグへの接続点としました。


BNCコネクタTips

通常のコネクタですがGND端子もワッシャもナットも取り除いてしまい直接GND側をハンダ付けしてしまいました。60Wのコテならうまくいきました。FT50-43のトロイドコアをセンターピンに被せて取り付けています。

 
       3:1の巻き線比の場合、インピーダンス比は9:1になる

トランスフォーマーの巻き線比の2乗がインピーダンス比になることの説明

巻き線比によって生起される電圧は巻き線比倍になり、電流は巻き線比分の一になる。オームの法則によってインピーダンスを計算すると上記のようになる。

小さなトロイドコアの場合、安定したトランスフォーマーを作るのは難しいようです。コアの材質によっても状況が変わってきます。
入手しやすいトロイダルコアにはFTシリーズとTシリーズがありますが、一般に、FTシリーズは高い透磁率を持っているが高い周波数では使えず、Tシリーズは透磁率は低いが高い周波数でも使えるという特性があるようです。
同じ材質のコアでは、形状が大きくなるほどAL値(インダクション係数)という巻き数とインダクタンスの関係を示す数値が大きくなるようです。つまり、大きなコア程巻き数に対するインダクタンスが大きくなるようです。
そこで、2つの材質で9:1のトランスフォーマーを作ってみました。
写真の上がTシリーズの#2のもので、下がFTシリーズのものです。
この2つでは1.9MHzから28MHzまでほぼ同じような動作をすることを確認しました。

T37とかT50という小さなTシリーズのコアでは、十分な磁性率を得ることが難しく、安定した変換を期待できないと思います。

特定の長さのエレメントでは複数のバンドで整合点が得られるとの情報をもとに、手軽に実験できる16.2mのワイヤーで実験してみました。この長さで、40m、20m、15m、12mバンドではどうにか使える範囲にSWRが下がっていました。他のバンドでは結構高いSWRで使えそうにありません。それでも、1本のワイヤーで、切り替え操作もなく複数のバンドに出られるのは便利です。広い場所でもっと長いワイヤーで実験すれば、別の結果が出るかもしれません。

T130 #2を使って9:1のトランスフォーマーを作りました。
実際に変換率を測定すると9:1になっていない場合が多いようです。特にトロイドが小さい場合大きな変換比率になっていました。
アンテナの給電点でインピーダンスを下げるという目的のためにこのトランスフォーマーを使っています。個々の特性についてはケースバイケースで扱うことが必要です。

Blog :
RandomLengthAntenna & EFHW

回路は5W程度までのQRPでの使用を想定しています。基板は使わず、各々のパーツを結ぶだけで作りました。ショートの危険がある部分には保護チューブを被せてあります。

FT37#61のトロイドコアを使い、それぞれ9Tの巻き線をしたトランスフォーマーに13.5mのワイヤーを繋いだアンテナを作りました。
この長さで複数のバンドで整合が取れるということだったのですが、実際に測定してみると7MHz、18MHz、24MHz、28MHzでどうやら使えそうなSWRになりましたが、他のバンドではSWRが高く、使えそうにありません。カウンターポイズを付けてみましたが、改善は得られませんでした。この長さで7MHzが使えるのはラッキーだと思います。


22mのワイヤーでも測定してみました。どうやら使えそうなSWRになったのは3.5MHz、10MHz、18MHz、21MHz、28MHzでした。7,14,24は高いSWRになっていました。一本のワイヤーでたくさんのバンドを使うのはなかなか難しいようです。

ネットで拾ってきたワイヤーの長さとSWRの関係の表です。出典は定かではありません。

ペットボトルの注ぎ口を切り取り、それを2つ合わせたものを張り合わせ、その中にトランスフォーマーを収納します。左右それぞれの端子に配線をしてから、真ん中でホットグルーを用いて接着します。

コアによる違い

コネクタと一体にしたものを作りました。FT37#61のコアを使い、それぞれ9T の巻き数です。
470Ωの抵抗をロードとして測定してみると、1.9MHzから28MHzまで50Ω台に収まっています。設計通りの動作をしているようです。

ランダムワイヤーでの使用を考えていますが、QRPGuysのマニュアルにもエレメントの長さには29ft、35.5ft、41ftなどが例示され、カウンターポイズには35ftが勧められています。そこで、今回の実験ではエレメントに35.5ft 10.8m、カウンターポイズには手持ちの関係で9.3mのワイヤーを使用しました。
14MHzでは1.8までしかSWRを下げることができませんでしたが、他のバンドでは1.0までに追い込むことができました。エレメントは先端を木の枝に結び、5mほどのグラスファイバーのポールに沿わせて引き下ろしてくる逆L字型の伸展でした。カウンターポイズは一直線に伸ばしました。
この組み合わせでも、十分な性能を得ることができました。Zマッチのチューナーは2つのVCを使って整合の良いところに追い込むことが容易にできました。

  

9:1 un un Tuner for Random Length Antenna

QRPGuysから頒布されているアンテナを参考に、ランダムレングスワイヤーアンテナのチューナを作りました。
9:1のトランスフォーマーに Zマッチ・チューナを組み込んだものです。
この構成で7MHz~28MHzの整合を取ることができました。

64:1 Transformer

ダミーロードとして、470Ωの抵抗を接続して測定してみました。周波数が高くなるほど数値は悪くなるようですが、上の写真のように、28MHzでもほぼ9:1のインピーダンス変換ができています。
ロングワイヤーアンテナの場合、その長さによって給電点のインピーダンスが異なりますので、450Ω付近になる長さのワイヤーを繋げば、整合が取れることになります。
また、適当な長さのワイヤーを繋ぐことで、複数のバンドにおいても整合が取れるようです。16.2m、22m、30m、41.5mなどの長さのワイヤーを使うと9:1のトランスフォーマーで、1.9MHzから50MHzのバンドでおおむねSWRは2以下で使えるという資料がネットにありました。
実際に測定してみると、アンテナの伸展状況によってインピーダンスは大きく変化しますので、複数のバンドでの使用は難しいところがあると感じました。


マルチバンドでロングワイヤーアンテナを使う場合、エレメントの長さについて、いくつかの実験結果が公表されています。その一つI6IGEさんのホームページです。